プロジェクトの背景と目的

気候安定化や持続可能な開発に向けた目標(SDGs)が、それぞれパリ協定、持続可能な開発のための2030アジェンダとしてどちらも2015年に国際合意されました。また、今後見込まれる気候変動影響に対応するため、我が国でも気候変動適応計画が閣議決定されています。

気候安定化に向けた緩和策と適応策の実施と持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取り組みとの間には大きなシナジーが期待されていますが、トレードオフも懸念されています。

また、気候安定化目標とSDGsの検討において、死活的に重要な水環境が軽視されてきたという問題があります。気候政策の検討には、AIMのような統合評価モデルと呼ばれるエネルギー経済モデルが中心として用いられてきました。この結果、エネルギーと経済の観点からは高い整合性が認められるものの、市場取引のない水資源については無尽蔵にあると仮定されたり、定常性が仮定されて旱魃や洪水の考慮が不足していました。同様に、SDGsも水の量的・質的制約や水環境の負荷が熟慮されたうえで設定されていません。

そこで本研究では、水災害、水熱質循環、水資源、食糧生産に着目し、世界的にも高い評価を得る全球水環境モデル群を活用することで、実施の際の水の量的・質的制約や洪水・旱魃などの災害発生の可能性を考慮しつつ、気候目標と SDGs のシナジーとトレードオフを定量的かつ地域詳細に整理し、同時達成の可能性を評価します。また、同時達成が難しい課題や地域を特定・抽出し、解決策の検討を行います。