卒論テーマ 

以下のような研究テーマに取り組んでいただいています。
1. 地球温暖化による世界やアジアや日本の洪水と渇水の変化
2.氷河の融解に伴う水資源の変化
3.世界や日本の洪水リスクの定量的評価
4.日本の地下水の現状と将来の活用見込み

研究テーマの持ち込みも歓迎します。

ちなみに現在の学生さんの取り組んでいるテーマは以下などです。


・水温カメラや衛星観測を活用した広域河川水温計測(観測)
・日本域の水温計測の現状と課題(文献調査)
・大規模アンサンブル気候実験を用いた近年の洪水増減に対する地球温暖化の寄与度の評価(データ解析)
・平成30年7月豪雨による産業停止被害の定量的評価(調査・データ解析)
・世界の洪水適応費用のモデル化(文献調査・データ解析)


研究室の目標と方針

研究室の目標

当研究室では, 持続可能な社会を実現するための, 水循環の情報社会基盤の開発を目指しています.

対象とするのは日本から世界までです. 過去から現在と, 気候変動を含めた将来予測までを研究対象とし, 水循環を中心に, 持続可能な社会に必要な知見を探求します.

工学は人々に「安全で快適な環境」を提供するための学問分野ですが, これからの工学における「安全で快適な環境」の構築とは, 目先の効率や利便性の改善のみを目的とするものではなく, 身の回りの環境だけを対象とするものでもありません. 将来の世界の持続可能性の探求と確立こそが現代の人類にとって最も重要な挑戦であり, 工学における重要な研究課題です.

しかしながら, 「あとは持続可能で安定した社会に移行することだけが課題」などと考えるのは先進国のエゴかもしれません. 世界には数多くの貧しい人々が住み、数多くの貧しい国があります. 彼らが求めているのは安定ではなく発展です.世界的に資源が枯渇しエネルギーへの制約が厳しくなる中で, どのようにして貧困を減らし, 平和で安定した世界を実現していくべきでしょうか. この問いに答え, 彼らの期待に応えることは, 我々先進国の人間に課せられた重大な使命, すなわちnoblesse obligeです.

このような持続可能な社会の実現, 貧困の無い世界を目指した途上国支援の実現, 国境を越えた国土の安全保障体制の構築のためには, 諸外国の状況を網羅した地球規模での知の情報基盤の整備を行うと共に, それを用いて地球環境問題を解決に導く技術を育む必要があります.
石油や石炭などの化石資源が近いうちに枯渇することはほぼ確実ですし(すでに掘削のコストは年々高くなっています), これらが枯渇せずとも地球温暖化の脅威はほぼ確実です. そのため、想定外の新エネルギー技術が現れない限り、人類は自然から得られるエネルギーとサービスを頼って社会を再構築するしかありません. その中心には水循環があります.

研究室の方針

来ていただく皆さんに最初からお別れの時について話すことはおかしいですが, この研究室を離れるときに, 良かったなあ, と本人も他人も心から思えるような仕事をぜひ一緒にしたいと思っています.

良い仕事をする一番のコツは, 集中と継続です. 毎日朝早くから夜遅くまで頑張っても, 集中をしなければ良い仕事はできません. 効率よく集中する方法は, プロの研究者になる場合でも, 社会に出て働く場合でも, 今後の人生でおおいに役立ちます. これまで部活などでスポーツを真剣にしていたり, 受験や試験勉強で十分な成果をあげてきた皆さんは, 集中の仕方を私よりも良くご存知かもしれません. ぜひ, その感覚を, 研究をする際に発揮してください. うまく集中するには良いリラックス方法も必要でしょう. 集中をするときに人は力がうまく抜けています. 良いリラックス方法がありましたら, 私にも教えてください.

どんなに集中して仕事をしても, それを継続しなければ良い成果をあげることは難しいです. 研究を継続するために最も良い方法は, 自分が楽しいと思う研究テーマを選ぶことです. まだ見ぬ結果が楽しみで楽しみでならない, そういう研究テーマを一緒に探したいと思います. 一方で, 何も結果が出ないと, 面白いテーマでも途中で行き詰ってしまうことがあるかもしれません. そういう場合は, 最後に自分のやりたいテーマで成果を出すための技術力をつける訓練だと思い, まずは何でも良いので手を動かして何かを出してみましょう.

研究室の運営

当研究室では週1回のゼミを行い, お互いの研究の進捗状況を確認しあいます. また, 各個人の研究テーマは本人が最も楽しい!と思えるものを独立に進めていただきますが, それらを行うために必要な技術や論文の勉強会は不定期に行います.
大学院へ進学予定の卒論生・大学院生は国内学会・海外学会での発表を奨励します。発表に必要な投稿費・参加費・旅費等は基本的に研究室からサポートします。
今年度から日直制度をはじめました。週1回程度、交代で登校日を設けています。

配属後に勉強すること

水文学, 気候学, 地理学などの自然科学的な分野の知識が必要になります. また, 計算は自身のWindows PCや研究室のLinuxサーバー上でプログラムを組んで行うことが多いです. プログラム言語は得意なものを自由に使っていただいて構いません. 温暖化実験の気候モデルや地球水循環シミュレータなど, 当研究室に関係する多くの既存のプログラムは, いろいろな理由がありFORTRANが多いです. データ解析や図表の作成は自身のWindows PCにAnacondaというpythonパッケージをインストールしている学生が多いようです. ArcGISも使えます. Excelだけで卒論が全部書ける人はあまりいないかも.

これらの知識を前もって知っていると始めが有利なことは確かですが, 研究室に来てから勉強していただくので構いません. 研究に必要な教科書や論文は, 最初はこちらからお渡しします.

芝浦工大では英語教育に力を入れていますが, 卒業に必要な最低限の単位を取るだけでなく, ぜひ在学中にできるだけ英語能力を鍛えて欲しいと個人的に考えています. 私の日々のメールの半分以上は英語で読み書きしています. 文献やデータの一部は英語で書かれていることも多いので, 英語をやっておくと研究にも有利です.学問分野だけでなく, 今後の土木分野の多く企業ではグローバル化がさらに進むことでしょう.公務員も外国語での対応が増えています. 研究室においても留学生や研究員, 海外からのゲストが来たら英語でコミュニケーションする必要があります. 語学は費用対効果がとても高いので, 20代で頭が柔らかいうちに基礎的な英語を叩き込むと将来の生活がより豊かになるのではと思います. 高校レベルの文法書1冊, 大学受験+αの単語を覚えてNHKの英語プログラムを聞き続けるだけでTOEICの点数はとても上がると思います.