震災時におけるインターネットの有用性


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目次

1.はじめに
2.震災報道の分析
3.各情報システムの特性
4.通信施設と電気施設の被災
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1.はじめに

 情報化時代」と言われながら、先の阪神・淡路大震災では、皮肉にも情報の途絶が救援活動の遅延などを招いた。大規模な災害や地震に備えて用意されてきた既存のシステムがうまく機能しないために、行政はおろか、市民までが情報の途絶で混乱し、事態がいっそう深刻化したことは否めない。そうした中で、注目を浴びたのは、インターネットであった。
 本研究は、震災時において既存のシステムとインターネットを比較して、インターネットの有用性を示す。次に、阪神・淡路大震災におけるインターネットの被災状況や活用状況を評価した上、今後の課題を提示する。

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2.震災報道の分析

(1) TV
 □ 映像取材により被災者・それ以外の視聴者双方に被害の具体的な情報を提供した。
 □ 「ドラマ化されたドキュメント」という被災者の言葉に表現される報道の「情報化イベント化」が進行し、反発を招いた面もある。

a 被災者にとって
 □ 電気供給の回復後、「被災者自身がマクロ的な被害状況を把握する」「生活情報を入手する(NHK深夜の生活情報、サンテレビの情報等)」等の役割を果たした。
 □ 個人の安否やごく狭い地域に対する生活情報等、被災者個人個人がもっとも必要としていた情報を提供するメディアとして十分機能したとは言えがたい。
 □ 「TVは同じ場所しか報道しない」という被災者の意見に見られるマスメディアとしての取材能力の限界を示した。
 □ 一部のTV(NHK教育)では安否情報をラジオと連動して流したが、それ以外では個人レベルでの情報提供はされなかった。

b 被災者外にとって
 □ 地震発生の約5分後、速報システムによる第一報を全国に流した。
 □ その後「現地の放送局スタジオからの報道」「電話取材による自治体からの情報」に始まり、午前8時以降「ヘリによる空中からの現地取材」によってマクロ的な被害状況を全国に報道した。
 □ 被害状況を連続的に報道し当日夜には「地震の原因究明」等を報道するに至った。
 □ このように被害報道−解説報道への変化がその日のうちに起こった。
 □ 被災地の悲惨な状況を映像で伝えることにより視聴者の現地支援行動(募金、救援物資の提供、ボランティア活動)へのきっかけを作った。
 □ 一方で局地的な被害の繰り返し報道によって、現地の実情と視聴者の被害認識にずれを生じた。

(2)ラジオ
a 被災者にとって
 □ 携帯ラジオは地震発生直後には情報源としてもっとも役立った。地震発生直後に停電した地域では携帯ラジオが唯一の情報源となった。しかし停電の回復した地域では速やかに(早い地域では数時間以内に)TVに情報源の主役の座を譲った。

b 被災者以外にとって
 □ NHKFM放送は当日昼から24時間安否情報に放送を行った。これはマスメディアであるラジオを個人への情報提供メディアとして機能させる試みであったと言える。
 □ しかし安否情報は一方的に流されるだけで聞く側のニーズ(長時間の放送の中のごく一部の情報のみが必要)に答えるのが困難であった。

(3)新聞
a 被災者にとって
 □ 新聞は配送システムが動き出すまでの数日間(地域で異なるがほぼ3日間程度)は機能しなかった。
 □ 宅配の復活後は新聞は生活情報を伝える中心的な手段となった。阪神の地域版は地震関連の生活情報コーナーを設け、風呂に入れる場所などといった細かな情報も掲載するようになった。
 □ 行政からの新聞の折り込みによる情報は有効であった。

b 被災者以外にとって
 □ 新聞の報道内容は当日から3日間程度は「個別の被害報道」が中心であった。
 □ 4日目頃から被害の全貌を概観する記事が増え、7日目頃から「復興」に言及し始めた。この時期は初期の混乱が一応収束し死者の数がほぼ判明した時期に当たる。
 □ 新聞はその後もほかのメディアに比べると継続的に震災報道を継続し、問題点の指摘や今後の備えのあり方に対する提言を行った

(4)パソコン通信(ニフティ)
 □ 地震発生後、当日午後1時に臨時メニューを開設し、掲示板で個人レベルでの情報交換の場を提供した。また地震発生当日から3月末まで、マスコミによって発信された地震関連のニュースを提供した(その後トップメニューに移動)
 □ コーナー全体へのアクセスチャージを無料化した(1月18日午後7時半)
 □ 義援金受付を行った(1月19日正午)。
 □ ボランティアの活動の場を提供した(震災ボランティアフォーラム1月26日〜、インターVネット3月1日〜)。

a.被災者以外にとって
 □ 初期の混乱が収まるにつれ「パソコン通信上で自分の無事を知らせる」「パソコン通信から地震に関するマクロ的な情報を得る」「自ら情報発信者となって現地の状況を伝える」などの役割を果たした。

b.被災者以外にとって
 □ 地震発生初期には「地震情報コーナー」のニュース速報で地震関連の詳細な情報を提供することにより、他のマスメディアと合わせてより正確な情報を提供する役割を果たした。
 □ その後、掲示板に被災地からの凶報が書き込まれ、個人レベルでの現地の具体的な情報を全国に伝えた。
 □ ボランティア未経験の人が理解を深め活動に参加するきっかけを提供した。

引用文:阪神・淡路大震災・ニフティサーブ対応レポート/ニフティ株式会社の許可を得て引用

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3.各情報システムの特性

(1) 各情報システムについて
 各情報システムの特性を
表―1に示す。インターネットの利点は、不特定多数が同時にそれぞれの目的で情報にアクセスできることである。他の情報システムでは、一方的な情報提供になってしまう。さらに、インターネットは、現地の情報が瞬時に伝えられ、その情報はネットワーク上に蓄積されるため、情報が途切れることがない。情報を受ける側は、インターネットの特徴を活かし電話回線の影響を受けず、必要な情報に必要な時にアクセスできる。発信される情報は、内容や量の制約を受けないので地震情報から地域的・個人的生活情報まであらゆるものが扱われ、意見の交換の自由に行える。
 一方、欠点として、電気・電話施設の被災の影響を受けやすいこと、ユーザーにインターネットに関する知識が求められること、情報に制約がないためデマが流れる危険があることなどがあげられる。


   表―1 各情報システムの特性
   ◎・・・非常に優れている ○・・・優れている △・・・劣る

インターネット  ラジオ    テレビ    新聞  
即時性(新鮮さ)
情報の蓄積量
情報量の制約
情報発信の継続性
必要な情報の入手しやすさ
情報の信憑性
機器の扱いやすさ



 □ 即時性
(新鮮さ)
インターネットは情報をネット上にアップさせた瞬間からアクセス可能となる。つまり、震災時の現地の様子を素早く発信することが可能である。また、情報更新をこまめに行うことで常に新鮮な情報を発信することができる。
 □ 情報の蓄積特にテレビ・ラジオは、放送された情報は基本的に蓄積されず、情報を得るにはタイムリーにアクセスするしかない。インターネットは、管理者が削除しない限り情報は蓄積される。
 □ 情報の制約ラジオ・テレビは時間に、新聞は紙面に制約を受け、提供する情報量は限られる。しかし、インターネットは、基本的に発信する情報量は制約を受けることはない。
 □ 情報発信の継続性他の情報システムは、限られた時間や紙面で震災以外の情報も提供しなければならず、継続的に大量の情報を提供することは難しい。しかし、インターネットは、情報の継続は管理者にゆだねられ、長期的な発信も可能である。
 □ 必要な情報の入手しやすさ特にテレビ・ラジオは、必要としている情報を得るにはそれを視聴し続けるしかない。しかしインターネットは、検索機能を活用して必要な情報にアクセスすることが可能である。
 □ 情報の信憑性インターネットは発信する情報に制約を受けないため、たとえデマを流そうともそれを阻止することはできず、混乱を招くおそれがある。
 □ 機器の扱いやすさ現在のところ、インターネットを利用するにはパソコンが必要である。パソコンを使ってインターネットを行うには多少のインターネットに関する知識が必要なため、他の情報システムから比較すると難がある。最近では、インターネット専用器やCATVを活用した機器が販売されるようになり、操作は簡単になってきてはいるが、他の情報システム都道との操作性を得るのは難しい。

 インターネットの優れている特性のなかでも、実際の阪神・淡路大震災においては、その特性を活かしきれない点があり問題を残した。以下は、私の考える問題点を列挙する。

 □ 早期の情報発信は評価できるが、その後、更新されない古い情報が放置され混乱したように思える。避難所での特別な環境での更新は困難であるかも知れない。
 □ 安否情報や情報ボランティアといわれるような人達によって編集された情報は、短時間に情報を得る手段として効果的であったが、情報の再編集を必要とするようなシステムは改善する必要が大いにある。
 □ デマを防ぐために情報の発信者を明確にする必要がある。

参考文献:
1) 金子郁容・VCOM編集チーム/「つながりの大研究」電子ネットワーカーたちの阪神・淡路大震災/NHK出版/1996
2) 中村肇 犬山市消防署/東海望楼 1996号6月号

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4.通信施設と電気施設の被災

 阪神・淡路大震災時のインターネットに必要な施設の被災状況を表―2に示し、ライフラインの復旧状況を図−1に示す。図−1より、両施設ともに2日間で8割復旧したことをが分かる。このように早く復旧できたのは、各々の地震対策が機能したからで、これによりインターネットが機能し、他のメディアよりも早く情報を伝えることができた。通信施設と電気施設のいずれかが欠けてもインターネットは機能しない。したがって両者を地震時に早急に復旧させることにより、さらにインターネットの機能を広く利用することが可能となる。

表―2 阪神・淡路大震災における各施設の被災状況

電気通信施設の被災状況
ネットワーク設備の被害・主要伝送路の4区間に影響
・県内通信の7交換局11ユニットが機能停止
・通信用電源のバッテリと非常用発電設備の故障
アクセス系設備の被害家屋の倒壊や火災等による引込み線やケーブルの断混線
電話サービスへの影響通信設備の故障による30万人の利用者の電話の不通
専用線サービスへの影響一般専用回線約3万回線のうち約3500回線が断混線
電気施設の被災状況
発電所の被害21発電所のうち10発電所に被害が発生
変電所の被害861変電所のうち50変電所に被害が発生
配電設備の被害配電柱の倒壊や電線の断混線により649回線に被害発生
送電設備の被害架空送電線は23線路、地中送電線は95線路で被害発生




表―1 ライフラインの復旧曲線


参考文献:
1)NTT技術ジャーナル:NTT/1994.8
2)NTT技術ジャーナル:NTT/1995.6
3)NTT技術ジャーナル:NTT/1995.10
4)NTT技術ジャーナル:NTT/1995.11
5)NTT技術ジャーナル:NTT/1996.4
6)NTT技術ジャーナル:NTT/1996.5
7)NTT技術ジャーナル:NTT/1996.6
8)防災白書:国土庁/平成6年度
9)防災白書:国土庁/平成7年度
10)防災白書:国土庁/平成8年度
11)大地震 知っておきたい事前の備え:財団法人 東京防災指導協会
12)神戸大学工学部地震情報センター:http://mech.mech.kobe-u.ac.jp/kueqic.html

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